[書評]壬辰倭乱が朝鮮の民を“民族”にした


「1592年壬辰戦争勃発当時、日本軍の東莱侵攻を描いた東莱府殉節図」

 1592年4月14日、釜山(プサン)沖合に日本の軍艦700隻余りが押し寄せた。釜山鎮は瞬く間に陥落して数千人が虐殺された。釜山に、金海(キメ)に、一度にどっと入って来た日本軍15万8700人余りが一斉に北上し、朝鮮の地は廃墟となった。彼らは奪い、盗み、殺し、燃やした。朝鮮の民は、これほど広範で無残な絶滅の脅威に直面したことはなかった。国王も知らなかったはずである。「6年間で50万人を超える戦闘兵が投入された壬辰倭乱は、第二次世界大戦以前まで世界史で最も大きな戦争」であり「戦争史で指折り数えられるほど、残忍で不当な戦争」との評価を受ける。

 キム・ジャヒョン・コロンビア大学元韓国学碩座教授は、この類のない惨事の中で、「朝鮮の民に『他-民族』と区別される『自-民族』に対する認識が生じた」と主張する。 自分の土地と自分の家族を守ろうとする人々が出てきた。義兵長は檄文を送り参加を促した。当代の文章家だった義兵長の高敬命(コ・ギョンミョン)は「全ての朝鮮人」に向けて檄文を書いた。「大きくても小さくても違いはない。私たちは一つの目標の下に団結した。遠くも近くもこの知らせを聞き、皆蜂起する」

 高敬命が言った「私たち」とは誰か。「侵略者を追い出して国を守り、自分の生活を取り戻す責任がある能動的な主体」として新しく呼称された朝鮮の民である。「一つの目標」とは何か。「私たちの共同体の特別で優越した道徳的な生活の方式を保存するために、夷狄の支配から共同体を守り抜く」のである。キム・ジャヒョン教授は、当時義兵長が送った檄文と通文、招諭文などを分析して、これらの文書に収められた激情的な修辞が、「全ての朝鮮人が一つの共同体として朝鮮を守る責任を共有するビジョンを持たせて、全ての地方を皆が守らなければならない一つの朝鮮に統合した」と結論付ける。歴史学者のベネディクト・アンダーソンが言った「想像の共同体」が、16世紀末の朝鮮に登場した。「民族」の誕生である。

 民族意識はハングルの地位を変えた。創製してから150年が過ぎて、「ローカルで私的であり女性的な言語」と見なされたハングルは、戦乱の渦中に「私たち同士」で通じる言語としての特別な地位を持つようになった。民を捨てて避難の道に向かい公憤を買った宣祖は、日本と明の講話交渉から朝鮮が徹底的に排除された時期に、ハングルで教旨を書き始めた。初めは漢文で作成した文をハングルに翻訳する方式だったが、後には初めからハングルで書いた。朝鮮政府が朝鮮人の情緒が込められたハングル文書を作り共有するのに至ったのである。「民というのは、愛らしいながらも恐ろしい存在だから、国は君たちでなければ誰を頼るのか。 (…)全ての民は国土を美しくして、必ず太平聖代を成し遂げるようにしなさい」。1599年2月中旬に作成された宣祖の『哀痛書』は、民族的情緒をぷんぷんと漂わせる。

 戦時に形成された民族意識は、戦後の記念事業を通じてさらに強化された。朝鮮は、「人生で最も重要なこととして『追慕』を挙げる儒教社会」だ。戦争で死亡した人々を記念する儀礼を行い、国を救った英雄を祠堂にまつった。有功者に死後栄誉を授与して子孫に補償した。キム・ジャヒョン教授は一連の過程を「戦争の記憶の国有化作業」と名付け、このような「記憶の政治」で最も重要な主題は「愛国心」だと指摘する。

 民族は近代の産物というのが、学界の定説である。大部分の人々が、開港後に外勢に抵抗する過程で民族意識が生じて強化されたと認識している。「民族談論は16世紀末の壬辰戦争(壬辰倭乱)が勃発した時に現れ、満州族の朝鮮侵略(丙子胡乱)を経て強化された」というキム・ジャヒョン教授の主張は、学界に大きな議論を呼び起こす話題だ。この熱い論争の中心にいなければならないキム・ジャヒョン教授は、残念ながら2011年に世を去った。病床で横になっていた彼女は、夫であるウィリアム・ハブッシュ・イリノイ大学教授に、コンピュータに保存されていた未完成原稿の存在を知らせた。数学者であるハブッシュ教授は、同僚の人類学者、韓国史家、中国史家に原稿を渡して編集方針を相談し、キム・ジャヒョン教授の弟子が、未完成だったメモを完成して参考文献と解説を付け加えた。人生の終わりまで続いた学者の研究情熱と、これを世の中に出すために努めた彼らの苦労が込められており、200ページ余りの分量の小さな本が、千斤のように重く感じられる。

【ハンギョレ新聞日本語版】http://japan.hani.co.kr/arti/culture/34628.html


書評なので本を売るための「盛り」があるのかもしれませんが、夢見過ぎ。

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